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2018.5.31

法務情報

弁護士から見る日大アメフト選手の会見での代理人弁護士の対応

日大アメフトの問題が連日各メディアで取りあげられていますが、弁護士が関与したもので気になったものがありましたので取り上げてみます。

 

議論が湧き上がっているのは、日大アメフト部の関西学院大学側の選手のタックルをした側の選手の記者会見での対応です。

記者会見の際に、代理人として同席した弁護士から、まだ学生でもあるし顔のアップは映さないように配慮して欲しい、との要請があったそうです。それにもかかわらず、少なくないメディアではアップの写真とともに報道され、このような要請に応じなかったマスメディアの対応について、不適切な対応なのではないか、と議論が生じているようです。

 

弁護士の代理人業務としては、このメディアに対し配慮を求めるというケースは少なくありません。

個人的な経験としても、重大な刑事事件などに関与する場合には、被害者名の掲載を控えて欲しいとか、被害者の居住エリアが特定されるようなことがないように、要請するようなケースは少なくありません。

犯罪被害者のようなケースでは、マスメディアも誠実に対応していただけるようなケースが多いという感触です。が、それに対して、今回のようなケースは代理人弁護士の対応としては、どう捉えたらよいでしょうか。

 

今回のケースでは、暴行を受けた関西学院大学側の被害者との対比でいえば、日大の選手は加害者という位置づけになります。それも暴力的行為を行った加害者です。そうなると、記者会見としては、当然のことながら、しっかりと顔を出して対応することが必要となります。顔を隠して記者会見をしても好意的には捉えられないように思われるからです。

 

これに対し、代理人弁護士が、強行に顔を出すようなら報道するな、あるいは記者会見に立ち会わせないような対応であれば、マスメディアからの反発は避けられないでしょう。

 

一方で、少なくとも代理人からの要請という形で、一定の配慮をマスメディアに求めたとすると、要請に応じて一定の配慮をしていただければそれで良いという話になりますし、配慮がされなければ、上記のように配慮が求められたにもかかわらずそれに反して報道したことになり、上記のような報道の是非の議論が生じてくる。これは結果的には、会見を行った側が相対的に同情的に見られる可能性もあります。

 

そうなると、代理人弁護士的な考え方としては、顔出しでの記者会見と、配慮を求める程度がバランスとしては適切なところなのかな、という感じがします。そういう意味では、どちらに進んだとしても、代理人弁護士が自粛を要請したことについて価値がある、と思います。

 

いずれにしても、このようなケースは、記者会見が世の中に対して大きな影響を及ぼします。そして、記者会見によるマスメディアへの影響、そして、その先にある視聴者への印象の与え方次第で、記者会見をした方の人生が左右されてしまうこともあるでしょう。メディア対応として、代理人弁護士としても慎重な対応が求められるところです。

 

弁護士:大橋

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